2018/11/04

民事信託一考

多分こんな記事を読む人はほとんどいないと思うけれど,調べてみた結果をちょっとまとめておこう.民事信託の受託者にまつわるお話です.現に受託者になりそうな人,民事信託について調べ始めたけど,信託口口座ってどうするんだろう...って思い始めた人には少し参考になるかもしれません.

民事信託において,受託者が委託者の信託財産(主に現金を想定)を管理する際に,分別管理義務とかいろいろと法律で定められている.となると,いわゆる一般人が通常利用している一般口座とは別の信託用の口座,いわゆる信託口口座が必要になる.

「信託口口座って開設可能ですか?」

とストレートに質問して回答のある銀行は極めて稀.ほとんどが,それはなんですか?から始まる.となると,信託口が必要な理由に到達するまでに,商事信託,民事信託それぞれについて語り,民事信託における受託者に求められる法律上の義務とかまで話してやっとこさ信託口の話にたどり着く.

めでたくそれらを話し終えてたいていの銀行では窓口の人や受付の人では対応できず,奥から人が出てくるケースがほとんどかと.で,

「当行では取扱しておりません」

という回答がもうほとんど.

信託口口座に求められるものとしては,受託者が破産や死亡した際に受託者本人口座とは異なるものである(名寄せされない,あるいは名寄せされたとしても違うものであると銀行側がシステム的に確認できるもの)とされている.いわゆる分別管理とか破産隔離とか言われるものか.この2つを満たせる銀行等はほとんどないが,極稀に存在する.

  1. 三井住友信託銀行
  2. オリックス銀行
  3. みずほ信託銀行
ほかの銀行等はちょっとわからない(沖縄のほうの信金で何やら動きはありそうだけど).それぞれの銀行の対応はまちまちだが,ひとまずざっと書いてみる.

  • 三井住友信託銀行
    • 各支店の財務コンサルタントと信託契約の公正証書化前に相談が必要.
    • 相談は受託者本人でも良いが,司法書士等の士業が前面に出て対応したほうが良さそう.
    • 財務コンサルタントがチェックし,問題なければ1~2週間くらいで口座開設までたどり着けるらしい.
    • 信託口口座あたりのミニマム金額(数千万円)の目安がある.
    • インターネットバンキングの機能は使えないらしい.
  • オリックス銀行
    • ここ数ヶ月くらいで動き出した様子.まだどんなものかわからないが,聞いた感じでは,三井住友信託銀行よりはライトな感じ.
    • もともと融資専門の銀行であることから,キャッシュカード等もなく,当初の信託財産や追加信託については振込.出金するにも一旦他の口座に振込することとなる模様.
    • 無通帳型のインターネットバンキング.
  • みずほ信託銀行
    • 詳細不明なんだが,時間がかかるらしい.まあみずほFGはどこも手堅い感じだからか....
    • 三井住友信託銀行と同様に士業が前面に立って,案文段階で銀行側と対応するよう.
    • 口座あたりのミニマム金額は不明.
  • SMBC信託銀行(番外?)
    • できるみたいなんだけど,PB部門で対応するらしい.
    • 口座あたり数十億円規模以上の信託財産を想定しているらしいから,もうそのくらいの財産のある人は,資産管理会社もあるだろうし,もうほかの手立てでなにかやっていると思うな.
信託財産のうち,たとえば上場株式とかだと共和証券というところが対応してくれるらしいが,不勉強ながら初めて聞いた会社だった.

ということで,実務上は信託財産のほとんどが土地という場合は上記の銀行を使わないで,いわゆる名寄せされちゃう口座にしておいて,その口座に関する情報を契約書(公正証書)に記載しておいて,ロックされたら,それをもとに解除してもらうような対応を取るらしい.この方法は受託者が死亡したりした場合,一時的に口座がロックされるが,それが解除されたとしても,予備的受託者への名義変更とか円滑にできるんだろうか.謎だな.あ,そもそも真の信託口口座であったとしても受託者が先に亡くなった場合,信託口口座の名義変更って実務上どうやって対応するんだろう....信託契約書を持って銀行へいけば,新しく次の受託者の名前の入った口座になるのかな.そうでないと困るね.

というところでいくと,
  1. 三井住友信託銀行:安心の信託口口座.ただし,それなりの信託財産が必要.
  2. オリックス銀行:まだはじまったばかりなので実際のユーザの声は聞こえてこないが,チャレンジしても良いかもしれない.
あたりが手堅いか.

ちなみに,受託者が実務遂行する上では,目的達成のために支出することが多々あると思われる.その際にクレジットカードが使えると記録も残るし,便利だと思うのだけど,信託口口座はその口座名称が非常に特殊であることから,広義の屋号口座の範疇も超えてしまっていてクレジットカード会社では現時点では対応できないようだ(大手のカード会社へ問い合わせたところどこも同様).そういえば,三井住友信託銀行は傘下にクレジットカード発行している会社があることから,いろいろと準備をしているところであるらしい.それと,オリックス銀行は決済口座としては使えないという話もあるらしい.

となってくると,信託口口座ごとに対応する一般口座を作成して,その一般口座を引き落とし口座とするクレジットカードで決済すればまあわかりやすいといえばわかりやすい.

民事信託の受託者は司法書士とかは就任できないようなので,個人が行おうとするとそれなりに大変そう....これとセットで後見発動していたりすると,いやはや大変です.

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